<波田のパソコン要約筆記者 若宮 貴子さん>

平成17年6月27日 信濃毎日新聞夕刊より 引用

聴覚障害者の感謝 力に

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 講演や会議の内容をその場で要約、パソコンに打ち込み、スクリーンに映したり画面を見せたりして聴覚障害者に伝える。短大の講義、小学校の卒業式、県議会・・。地元の東筑摩郡波田町をはじめ県内各地に出かける毎日だ。 要約する分野は行政、医療など幅広く、専門知識が求められる。始めたばかりのころ、「首長」を「組長」と変換したことも。事前の資料集めや読み込みは欠かせない。「仕事を要約筆記に絞りたい」が、報酬は1時間平均1,500円。下調べの時間は入らない。十分な収入とはほど遠く、派遣社員と掛け持ちして時間をやり繰りしている。
 事務職だった6年前、「パソコンを使ってボランティアをできないか」と考えたのが出発点。「どこかで聞いた」要約筆記について調べ、ボランティア団体を見つけた。県の手書き要約筆記講座を受講、パソコンを使う筆記は仲間に教わった。今は、情報機器の活用で障害者や高齢者の社会参加を支援するNpO法人「長野サマライズセンター」(事務局・塩尻市)メンバーでもある。

 手話を覚えられずに苦労したり、外出をあきらめたり。一人で悩みを抱える多くの中途失聴者に出会ってきた。機会を見つけては各地で実演し、要約筆記の知名度アップに力を入れる。

 「安定した職業に就こうか」との考えがよぎることもあるが、「利用者に『ありがとう』と言われた時の達成感」が続ける原動力。「もっとわたしたちを生活に使ってほしい」と願う。